木下あゆ美の実力




 木下あゆ美の実力はどうでしょうか。ウェーブマネジネント名古屋(パーツ)時代はまだまだローカルな活躍しかしていなかったのですが、次第にキー局のドラマに出演するようになります。そして子供向け特撮番組からスタートし、深夜ドラマの主役を張り、昼ドラにもレギュラー出演しましたが、プライムタイムの連続ドラマからはお呼びがかかっていません。現在の所属であるスターダストはテレビドラマや映画に力を入れているものの、綺羅星のごとくスターを抱える大手プロダクションにあって、彼女は女優として存在感を示しきれてはいないようです。木下あゆ美の芸能生活は順風ではあるものの、今年29歳の女優に芸能界の風は冷たいのかもしれません。グラビアアイドルの年齢詐称もむべなるかな。20歳前後のアイドル女優たちが何故か豊漁ムードの昨今、話題作への出演が乏しい彼女のキャリアは若干淋しいものがあります。

  高校一年でモデルとしてスカウトされた彼女は学校とモデル業の合間にレッスンを受け、18歳で歌手デビューを果たしました。当時は歌手だけではなく、CFタレントとしての活動もありましたが、本格的なデビューはこの時といえるでしょう。しかし彼女はすぐに上京せず、地元の短大に入学してしまいました。平行して芸能活動は続けていたようですが、この時期は目立った活動がありません。彼女が短大に通わずにすぐに芸能活動を始めていれば、展開は違ったものになっていたでしょう。大学の方針でなのか、それともパーツの方針でなのか、幸か不幸か、グラビアアイドル的な売り方はされなかったのです。当世風の巨乳アイドルタイプではないので、それはそれでよかったかもしれません。上京し、レイズインに移籍してからは、一気にグラビアとOVに登板し、売出しが開始されます。そして運命のデカレンが2004年。このオーディションに受かったことによって、彼女のフライトは不思議なゆれ方をします。レイズインは売り出しのスケジュール通りに、写真集の販促を狙って、グラビアの仕事も入れてきます。しかし、東映からは戦隊ヒロインとしてあまりにも露出度の激しいグラビアに出演することは敬遠されます。PTAから苦情が出そうな雑誌「Dokiッ!」(2004/7月号)でグラビア展開したり、水着のトレーディングカードの売り出しが許される時期ではありません。

  大手のスターダストならば過激な線はセーブされるかもしれません。グラビア路線よりも、女優に興味を持ち始めていた彼女は、東映の指導の下でスターダストへの移籍を決めたのではないかと思われます。すでに当時22歳。グラビアで売り出すには微妙な年齢でした。まして公称81-58-83のサイズは当時のグラビアアイドル界にあっては目立つ存在ではありません。彼女が女優を志したのは当初の志願通りとはいえ妥当な選択だったといえると思います。レイズインの所属のままで「れもん色の午後」の路線を走っていれば、瞬く間に彼女は凡百のヌードモデルとして消費されてしまったに違いありません。彼女はデカレンによってその道を回避しました。その後もグラビアでの活動は続きましたが、過激なセクシー路線ではなく、クール&ビューティの大人しめの路線に留まっています。

  しかし、ファンの要求は「れもん色の午後」であったようで、2005年の年間売り上げ4位(アマゾン)という驚異的な数字がそれを証明しています。彼女にもモデルとしての矜持はあるのでしょうが、「ポッコリしたお腹」のままで写真やイメージDVDに収まっていたりすることもあります。写真はともかく、イメージDVDでの自分自身の見せ方はうまい方ではないようです。だから逆に役として演じようとした時の没頭ぶりは「La Dolce」等に顕著に伺えます。セクシーアイドルがみせる素の解放による恍惚とは違い、そこには役者としてのきちんとした演技プランがあるようです。

 女優としての芝居はどうでしょうか。デカレン前と後で進歩しています。デカレン前後に出演したショートムービー「気がきく女」と「経理女」。後の方が圧倒的に演技力が向上しています。双方とも不倫OLの役ですが、表情といい、声といい雲泥の差です。「マスサン」での主演としての演技もかなり立派なものでした。「Aチャン」もよかった。しかし「マスサン」も「Aチャン」もアニメ的な、いわゆるコミック的なオーバーアクションの世界でした。思えば彼女は特撮やオカルト、アクション、そういった映画やドラマにしか出演していません。役にはまって、いい演技に見えるということが多かったのです。役に助けられていただけで、彼女の演技力に見えたもののほとんどは、コスプレにすぎなかったのかもしれないのです。謎の転校生、不倫OL、戦隊ヒロイン、お姫様、アクションヒロイン、ホラークイーン、闇の仕置人、木下あゆ美。「結婚式へ行こう!」で露呈したのは、彼女の芝居が普通のドラマの空間になじめていないという点でした。

 「結婚式へ行こう!」は特撮畑の俳優が何故か大挙出演していましたが、彼女自身に力が入りすぎていたようで、あのメンバーの中でも浮いていました。彼女自身の魅力に揺るぎはないものの、あのドラマの中でよい意味で目立っていたかというと疑問符が浮かびます。木下あゆ美を知らない視聴者にとっては、「真琴役の人の演技って浮いてるけど、主役からしてオーバーな芝居だし、漫画的な世界観だからいいのかしら。」といった感じがしたに違いありません。というよりも、私個人の見解としては見ていることが辛かったのです。怨み屋メンバーの中では嬉々として怨み屋役を楽しんでいた彼女が、明るい昼ドラの世界に急に放り込まれて右往左往しているように見えました。「笑っていいとも!」を担当した初期のタモリのような違和感を私は感じたのです。元々は準主役のはずの彼女が50回の長丁場の中で埋もれていってしまったのは、彼女のあの時点での資質が昼ドラの世界とあわなかったからです。本来トリックスター的面を持つ北沢真琴という役はもっと自分の個性を前面に出して自分を出すか(役を引き寄せるか)、役に徹して自分を殺すか(役になりきるか)しないと務まらないエキセントリックな役柄です。木下あゆ美は役になりきるタイプかもしれませんが、徹しきれていなかったし、逆に北沢真琴を木下あゆ美に引き寄せたとも思えなかったのです。北沢真琴の持つ「市井の人間」的要素は彼女が今まで演じてこなかったタイプだったので、ギャップがあったのでしょう。その戸惑いが彼女の芝居に出てしまったに違いありません。「結婚式へ行こう!」はラブコメタッチの軽いノリの昼ドラです。その世界に乗れる軽やかさがこの時期の彼女には感じられなかったのです。

 その後、彼女は「美味学院」になんと女子高生役(当時24歳)としてゲスト出演をします。女王様キャラで、これはまんま「Aチャン」の木下あゆ美であり、彼女の得意とするクール&ビューティだったために、余裕すら感じられました。しかし彼女がプライムタイムの連続ドラマに出演するためには「市井の人間」役の経験を積む必要があります。今まで演じていないタイプの役。北沢真琴も漫画的なキャラではしたが、超能力者でもなんでもない分、芝居に苦労していました。もっと自然体の自分に近い役柄を演じて、自分と役との間に自在な関係が作れるような芝居巧者になってほしいものです。私が「経理女」を買うのは、あの役柄こそ「市井の人間」を等身大に演じ得たものだと思えたからです。「真木栗ノ穴」「ナチュラル・ウーマン2010」の役はどちらも平凡な編集者の役でした。自然な演技が身についてきた感触がありましたが、いかんせん出番が少なかったのが残念ですが、両作とも彼女の美人女優としてのキャリアのメモリアルとして記憶に残したい作品です。

 2010年「娼婦と淑女」で昼ドラに再挑戦し、「結婚式へ行こう!」のリベンジに成功します。2011年には舞台俳優たちに混じって本格的な舞台にも出演しました。他の女優陣に拮抗して、それぞれ見事に大役をこなしましたが、まだまだ役に恵まれているといった印象が残ります。2012年以降、彼女は戦隊ものや特撮、アクションものに連続出演を果たして原点回帰します。その後はドラマのゲスト出演や土ワイへの出演が目立ち、やや役柄が固定化されつつあります。事件のかげに木下(キマシタ)あゆ美と認知されるのもそう遠くはないでしょう。とはいえ子育て中の主婦としても奮闘中のためか、スターダストからennoエンノに移籍して女優としての活躍がかなり制限されているようです。そのためか市井の人物をゲストで演じることが多くやっとジャンル女優を脱皮できたのかもしれません。(それはそれで寂しいのではありますが・・・)

 さて声優としての彼女はどうでしょうか。いい声をしています。これぞ天賦の才。魅力的な声です。ラジオドラマでの芝居もかなりうまくなっています。ナレーターとしてもいけると思います。声には天性のものがあるので、是非生かしてほしいものです。

 彼女の足の綺麗さを寺島進がほめていましたが、足よりも彼女の魅力は目にあると思います。吊り目で、しかもちょっと斜視が入っています。このタイプの目に私は弱いのです。ガールズ・イン・ユニフォームの食玩フィギアはこのよく特徴を捉えています。