クール・ディメンション




クール・ディメンション(2006年、「クール・ディメンション」フィルム・パートナーズ)

 製作サイドの自己満足は見苦しい。クール・ディメンションは脱ぎそうで脱がない三津谷葉子主演の殺し屋三人娘のお話。いわゆるキャットファイトムービーを期待させるのだが、三人娘のお色気は全くなし。代わりにAV女優一人が頑張ってお色気シーンを担当しているので、そこだけでR指定という典型的なVシネマのつくりである。
 しかし、お粗末君とはこのような映画をいうのだ。アクションの全部を男のスタントマンがやっているのが、あまりにもまるわかり。まるで往年のスケバン刑事である。赤いレザースーツの三津谷が、アクションを始めると獣神サンダー・ライガーに見えてしまう。樽ドルに合わせたスタントマンといえばそれまでだが、吹き替えが目立ちすぎるのでげんなりしてしまう。残りの二人娘にはそもそもアクションのアの字もなく、これでアクション物だと言い張るとは、製作者の頭がおかしいとしか思えない。しかも70分の尺で終わらせるべく、主要キャラは皆殺しである。どうにも製作意図が分からない。おそらく殺し屋三人娘を演じている女優のファンが見ても、おそらく噴飯物であることは紛れもない。登場人物が死ねば終わりというものではない。


 心に傷を受け子供の心のままで成長してしまった女性役を木下あゆ美が好演し、窒息しそうなストーリーの救いとなっている。台詞が全くない、難しい役だった。彼女の描く絵がキャラクター設定上、うますぎるのは演出が下手なだけで、彼女の落ち度ではない。とにかく素晴らしい。
 母親役が大西結花というのはスケバン刑事(風間三姉妹)へのリスペクトか。しかし、脚本と演出にセンスが感じられない。ファーストシーンのタイトルバックからして夢のないこと夥しい。この映画は殺し屋三人組が、三人とも無事で次回作もあるのかなと思わせるような爽快な作りにして、幅や含みを持たせておかないと成立しない話である。そういうことを製作者はまるでわかってない。企画を通した制作プロダクションも凡百のイメージDVDを撮るよりは箔がつくと思ってのことかも知れないが、どうにも困った映画である。主演三人のファンでもないと、そもそも見ないような映画を制作してしまうのは企画力の貧困であるといって間違いない。それ故に遠藤憲一の存在感だけが空しく残ってしまう。いわゆる一つの失敗作の見本と言ってよい。